生産技術コンサルタントの藤代です。
車載向け電子部品メーカーの生産技術部に18年いて、ポッティングとコーティングのラインを10本以上立ち上げてきました。
その18年で一番手こずったのが、放熱用のフィラー入り樹脂です。
朝一の1ショット目だけ量が足りない、昼過ぎからミキサの先が固まり始める、抜き取り検査で硬化不良が出る。
原因を潰したつもりでも、材料を変えると同じ症状がぶり返す。
高粘度・高充填材の樹脂を安定して吐出するには、押さえるべき条件が3つあります。
順番に書いていきます。
Contents
そもそも、なぜ材料は「硬くて重い」方向に進むのか
装置の話に入る前に、材料側の事情を一度確認させてください。
ここを飛ばすと、装置に無理な要求をしてしまいます。
長野県工業技術総合センターの技術情報「樹脂複合材料の高熱伝導化技術の紹介」では、電子機器の小型化・高集積化に伴って発熱が問題になり、樹脂には絶縁性だけでなく高熱伝導化も求められていると説明されています。
そして熱を逃がすために、アルミナや窒化ホウ素、窒化アルミといった熱伝導性フィラーが高充填されます。
同資料では、フィラーを入れていくとある充填量から熱伝導率が急に上がる現象も紹介されています。
樹脂の中でフィラー同士が接触して、熱の通り道ができるからです。
つまり、放熱性能を上げようとすると材料は必然的に硬く、重くなる。
吐出しにくいのは材料が悪いからではなく、性能を取った結果です。
装置側で受け止めるしかありません。
条件1:粘度の変動に左右されない計量方式を選ぶ
まず計量です。
ここが崩れると後工程で何をしても直りません。
高粘度材で困るのは、粘度が一定でないことです。
朝と昼で液温が違えば粘度も動きます。
圧送の圧力で流量を決める考え方だと、粘度が動いた分がそのまま吐出量の誤差になります。
だから容積で切り出す計量方式が向いています。
プランジャポンプのように、シリンダの移動量で1ショットぶんを機械的に決める方式です。
粘度が多少上下しても、切り出す体積は変わりません。
比較するときはカタログの使用可能粘度の上限を必ず見てください。
たとえばナカリキッドコントロールの微少量用2液型ディスペンサ「νシリーズ」は、使用可能粘度1〜300,000mPa・s、計量方式は容積計量(プランジャ式)と公開されています。
同じメーカーでも、ショット吐出か連続吐出かで選ぶ機種は変わります。
条件2:ミキサは「混ざる」と「詰まる」のバランスで決める
次が混合です。
2液性樹脂は混合比がズレれば硬化不良になります。
よく使われるスタティックミキサは、エレメントで液を分割して合流させる構造で、動力源が要りません。
使い捨てなので洗浄も不要です。
ポットライフの短い樹脂に向いています。
ただしエレメントを増やせば混ざりは良くなる一方で、圧力損失も増えます。
高粘度材では、この圧損が計量部への負担になる。
逆に減らせば圧損は下がりますが、混合不足のリスクが上がります。
現場での判断材料を挙げておきます。
- ポットライフが短く洗浄できないなら使い捨てのスタティックミキサ
- 混合比が1:5より偏る、または粘度差が大きいなら回転式など混合力の高いタイプ
- 段取り替えが多いなら、先端の脱着が簡単な構造を優先する
私の経験では、ミキサだけ何本か替えて試すのが一番早く答えが出ます。
装置ごと入れ替えるより安く済みますし。
条件3:自社の材料で実機を動かして確かめる
3つ目が身も蓋もない話で、実機テストです。
条件1と2を机上で詰めても、フィラー入り樹脂の挙動は材料ごとに違います。
粘度の数値が同じでも、チキソ性や粒子径が違えばノズル先端での切れ方は変わる。
カタログの上限粘度をクリアしていても、自社の材料で出るかどうかは別問題です。
なので、選定の最後は必ず実機で確認してください。
主要メーカーはテストルームを持っていて、材料を持ち込めば実機で試せます。
動きを先に見ておくのも有効です。
たとえば放熱用2液ギャップフィラーを計量から混合吐出まで実演しているデモが公開されていて、協働ロボットと組み合わせた吐出の様子が確認できます。
高フィラー含有・高比重の樹脂を扱っている事例なので、放熱材の自動化を検討している方は見ておいて損はないはずです。
ちなみに放熱材の需要そのものは当分減りません。
NEDOは2026年3月の記事で、SiCやGaNといった次世代パワー半導体の適用先拡大を支援していると紹介しており、応用分野には電動車も含まれます。
発熱密度が上がれば、放熱材を塗る工程も増えます。
まとめ
3つの条件を並べ直します。
- 容積計量など、粘度変動に強い計量方式を選ぶ
- ミキサは混合度と圧損のバランスで決める
- 最後は自社材料で実機テストをする
正直に言うと、私はこの3つを順番どおりにやれた現場をあまり知りません。
たいてい装置を入れてから材料が変わり、また悩む。
それでも計量方式だけは後から変えられないので、そこにいちばん時間をかけてください。
最終更新日 2026年8月4日 by aikapa



