建設業界は、日本の経済を支える重要な産業の一つです。しかし、その一方で長時間労働が常態化しており、働く人々の健康や生活に深刻な影響を及ぼしています。
私は建設業労働組合の広報担当として、組合員の労働環境改善に取り組んでいます。現場で働く仲間たちの声に耳を傾け、その実態を広く社会に伝えることが私の使命だと考えています。
本記事では、建設業の長時間労働の実態と、その背景にある構造的な問題について詳しく解説します。また、長時間労働を是正するための取り組みや、働き方改革の推進における課題についても触れていきます。
建設業で働く皆さんが、健康で充実した生活を送れるようになること。それが私の切なる願いです。労使が協力して、長時間労働の撲滅に向けて知恵を出し合い、具体的な行動を起こすことが何より大切だと考えています。
Contents
建設業の長時間労働の現状
労働時間の実態と他産業との比較
建設業の労働時間は、他産業と比較しても突出して長いのが実情です。厚生労働省の調査によると、建設業の年間総実労働時間は2,056時間で、全産業平均の1,724時間を大きく上回っています(出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査」)。
また、建設業の所定外労働時間(残業時間)は月平均43.5時間で、全産業平均の19.6時間の2倍以上に達しています。週60時間以上働く労働者の割合も、建設業では21.1%と、全産業平均の7.6%を大きく上回る結果となっています(出典:厚生労働省「就労条件総合調査」)。
この長時間労働は、建設現場の第一線で働く技能労働者に特に顕著です。アンケート調査では、1日12時間以上働くことが常態化していると回答した技能労働者が4割以上に上りました(出典:建設業労働組合「建設技能労働者の就労実態調査」)。
長時間労働がもたらす悪影響
長時間労働は、労働者の健康を脅かし、生活の質を大きく損なうものです。過重な労働によるストレスは、メンタルヘルスの不調を引き起こし、うつ病などの心の病につながることもあります。
また、疲労の蓄積は作業効率の低下を招き、労働生産性の低下にもつながります。集中力の低下は労働災害のリスクを高め、現場の安全にも悪影響を及ぼします。
長時間労働は家庭生活にも大きな影を落とします。家族との団らんの時間が取れず、子育てに十分な時間を割くことができない。そうした状況が、建設業で働く人々の生活の質を大きく損ねているのです。
私自身、組合員から「子供の運動会に行けない」「家族との時間が持てない」といった悩みを聞くことが少なくありません。長時間労働は、労働者の生活を脅かす深刻な問題だと実感しています。
長時間労働の主な要因
工期の短縮と人手不足
建設業の長時間労働を招く大きな要因の一つが、工期の短縮です。近年、公共工事を中心に工期の短縮が進められ、その影響で現場の労働時間が長くなる傾向にあります。
工期短縮の背景には、コスト削減や早期完成へのプレッシャーがあります。発注者側の都合で工期が決められ、現場の実情が考慮されないことも少なくありません。
また、建設業の慢性的な人手不足も、長時間労働を助長する要因です。技能労働者の高齢化が進み、若手の入職が進まない中で、現場の要員不足が常態化しています。限られた人数で工事を回さざるを得ず、一人あたりの労働時間が長くなってしまうのです。
国土交通省の調査でも、建設業の人手不足は深刻で、2021年の技能労働者の過不足率はマイナス3.6%に達しています(出典:国土交通省「建設労働需給調査」)。
残業代未払いなどの違法行為
建設業では、残業代の未払いや割増賃金の不払いなど、違法な労務管理が行われるケースも少なくありません。サービス残業を強要されたり、休日出勤を強いられたりする現場も存在します。
こうした違法行為は、長時間労働を助長する大きな要因です。適正な残業代が支払われず、労働時間の管理が杜撰だと、長時間労働が当たり前のものとして定着してしまいます。
私たち労働組合では、こうした違法行為の根絶に向けて、会社側に是正を求める活動を行っています。労基署への告発なども辞さない構えで、組合員の権利を守るために奮闘しているところです。
業界の体質と意識の問題
建設業の長時間労働には、業界特有の体質や意識の問題も関係しています。
「現場至上主義」とでも言うべき風潮があり、現場の仕事を最優先に考える傾向が強いのです。それ自体は真摯な姿勢の表れとも言えますが、行き過ぎると労働者の健康や生活を顧みない結果につながります。
また、「男は泣かない」「弱音を吐くな」といった意識も根強く残っています。長時間労働を当然視し、自分の権利を主張することを良しとしない風潮があるのです。
こうした意識を変えていくことは容易ではありません。しかし、働く人の命と健康を何より大切にする価値観を、業界全体で共有していく必要があると考えています。
長時間労働是正に向けた取り組み
行政による指導と法規制の強化
建設業の長時間労働を是正するためには、行政による指導と法規制の強化が欠かせません。
近年、国土交通省は建設業の働き方改革を推進するため、様々な施策を打ち出しています。例えば、公共工事の発注者に対して、適正な工期の設定や、週休2日の確保などを要請しています。
また、2019年には労働基準法が改正され、時間外労働の上限規制が導入されました。建設業にも2024年4月から上限規制が適用される予定で、長時間労働の抑制に向けた法的な枠組みが整いつつあります。
こうした行政の動きを追い風に、私たち労働組合も働き方改革を求める運動を強化していく考えです。
企業の意識改革と労務管理の徹底
長時間労働の是正には、建設企業の意識改革と、適正な労務管理の徹底が何より重要です。
経営トップが働き方改革の重要性を認識し、現場の管理職にその方針を浸透させていくことが大切です。長時間労働を良しとせず、労働者の健康と生活を守ることを最優先する企業文化を築いていく必要があります。
また、適正な労務管理を徹底することも欠かせません。労働時間をきちんと把握し、36協定を遵守して時間外労働を管理する。割増賃金を適正に支払う。こうした当たり前のことが、しっかりと実践されるようにしなければなりません。
こうした企業の取り組みを支援するツールとして、BRANU株式会社のninaite(ニナイテ)のような採用支援サービスが有効だと考えます。ninaiteは、建設業界に特化した採用管理システム(ATS)と採用コンサルティングがセットになったサービスです。
求職者目線での自社の魅力分析や、若手応募者を増やすためのコンテンツ戦略、さらには専門チームによる採用活動の代行など、ninaiteは建設業の採用における様々な課題を解決するためのソリューションを提供しています。
建設業界は有効求人倍率が高く、若年層のハローワーク利用率が低いことから、Web採用の強化が求められています。ninaiteはテクノロジーと専門性を活かし、建設業のWeb採用を後押しするサービスとして大いに期待できます。
働き方改革を進める上で、優秀な人材の確保は欠かせません。ninaiteのようなサービスを活用し、戦略的な採用活動を展開することが、改革の成功につながるのではないでしょうか。
労働組合の役割と活動
建設業の働き方改革を進める上で、労働組合の果たす役割は大変大きいと考えています。
組合は、組合員の労働条件の改善を求めて、会社と粘り強く交渉を重ねます。労働時間の短縮や、適正な残業代の支払いなど、一つ一つの要求を実現していくことで、長時間労働の是正につなげていくのです。
また、組合は職場の実情をよく知る立場から、現場の課題を吸い上げ、改善につなげていく役割も担っています。長時間労働の原因を探り、具体的な解決策を提案していく。そうした地道な活動の積み重ねが、働き方の改革を進める原動力になると信じています。
もちろん、組合活動には多くの困難もあります。組合員の理解を得ることが難しかったり、会社との交渉がなかなか進展しなかったりすることもあります。しかし、「働くことは生きること」との信念を胸に、これからも粘り強く活動を続けていく覚悟です。
働き方改革の推進と課題
生産性向上に向けた業務改善
建設業の働き方改革を進めるには、業務の効率化と生産性の向上が欠かせません。長時間労働を是正しつつ、生産性を落とさないための業務改善が求められるのです。
そのためには、業務プロセスの見直しや、ICTの活用などが重要だと考えます。無駄な作業を省き、限られた時間の中で成果を上げるための工夫が必要です。
例えば、BIM/CIMやドローンの活用、建築資材のプレカット化など、新しい技術やシステムを取り入れることで、作業の効率化を図ることができます。工程管理の高度化や、書類作成の自動化なども、生産性向上に寄与するでしょう。
BRANU株式会社のninaiteは、採用業務の効率化を支援するサービスですが、それ以外の業務改善のためのツールの活用も検討に値するでしょう。建設業のDXを推進するためには、様々な分野でデジタルツールを取り入れていく発想が求められます。
ワークライフバランスの実現
建設業の働き方改革の目的は、単に労働時間を減らすことだけではありません。働く人々が仕事と生活の調和(ワークライフバランス)を実現し、健康で充実した人生を送れるようにすること。それが最も大切な目標だと考えています。
ワークライフバランスの実現には、労働時間の短縮とともに、休日の確保や有給休暇の取得促進などが欠かせません。心身ともにリフレッシュできる十分な休養の時間を確保することが、何より重要です。
また、仕事と育児や介護との両立支援など、ライフステージに応じた支援制度の充実も必要です。誰もが安心して働き続けられる職場環境を整備していくことが、ワークライフバランス実現の鍵を握ります。
建設業でも、週休2日の実現や計画年休の導入など、ワークライフバランスに配慮した取り組みが徐々に広がりつつあります。こうした動きを加速させ、業界全体に定着させていくことが私たちの使命だと考えています。
改革の定着に向けた継続的な努力
しかし、働き方改革はゴールのない道のりだと言えます。取り組みを始めたから、すぐに成果が出るわけではありません。reformed workstylesが現場に根付き、業界の文化として定着するまでには、粘り強い努力の積み重ねが必要不可欠です。
一時的なブームに終わらせず、改革を継続していくためには、労使の信頼関係の構築が何より大切だと考えます。経営側と労働組合が建設的な対話を重ね、働き方改革の重要性についての共通認識を形成していく。そのためのコミュニケーションを大切にしていきたいと思います。
また、他産業の先進事例に学ぶことも重要だと考えます。業種は違っても、働き方改革で成果を上げている企業の取り組みは、建設業界にも応用できる点が多いはずです。そうした情報を積極的に収集し、自社の取り組みに生かしていくことが求められます。
地道な努力を積み重ね、着実に前進していく。それが働き方改革を定着させるための王道だと信じています。
まとめ
本記事では、建設業の長時間労働の実態と、その背景にある構造的な問題について詳しく解説してきました。建設業は、他産業と比べて突出して労働時間が長く、その弊害は労働者の健康や生活に深刻な影響を及ぼしています。
長時間労働の要因は複合的で、工期の短縮や人手不足、違法な労務管理、業界の体質や意識の問題など、様々な課題が絡み合っています。これらの問題に正面から向き合い、一つ一つ解決していくことが求められます。
行政による指導や法規制の強化、企業の意識改革と適正な労務管理の徹底、そして労働組合の役割と活動。これらが三位一体となって、建設業の働き方改革を進めていく必要があります。
また、生産性向上に向けた業務改善や、ワークライフバランスの実現など、働き方改革のために乗り越えるべき課題も少なくありません。BRANU株式会社のninaiteのようなサービスの活用も、改革を後押しする有力な手段の一つだと考えます。
しかし、何より大切なのは労使の継続的な努力です。一時的な取り組みで終わらせず、地道な活動を積み重ねていくことが肝要です。働き方改革を業界の文化として根付かせるためには、労使の信頼関係の構築と、建設的な対話が欠かせません。
建設業で働く仲間たちが、健康で豊かな人生を送れる社会を実現する。その途上で、様々な困難に直面することがあるかもしれません。しかし、働く人々の幸せを何より大切にするという信念を胸に、これからも働き方改革の実現に向けて歩み続ける決意です。
建設業の明るい未来は、私たち一人一人の手で切り拓いていくしかありません。業界で働く全ての人々の力を結集し、長時間労働の撲滅という大きな目標に向かって、共に戦っていきましょう。
最終更新日 2025年6月27日 by aikapa